人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『白昼夢にて』展覧会レポート

・KAPL6月の展覧会『白昼夢にて―清水絢子作品展―』が、28日をもって会期を終えました。

27日のレセプションでは、20名を超える来場がありました。

『白昼夢にて』展覧会レポート_b0156423_22302387.jpg



来場者が作品の前で感想を語り合う姿が多くみられました。

ご来場してくださった皆様、本当にありがとうございました。



展覧会を終えて、作者である清水絢子の感想をご紹介いたします。



以下、作者の展覧会後の感想



清水です。

来場してくださった皆様本当にありがとうございました。

今回、作品を鑑賞してくださった皆さまに私から一つの作品に対し一つの問いかけを用意させていただきました。その試みから絵を見て、質問を見て、想像し物語を生み出してもらおうといったワークショップに繋げました。

皆さまが創ってくださった物語をいくつかあげたいと思います。



『オフィーリア』

『白昼夢にて』展覧会レポート_b0156423_22222336.jpg



この作品の問いかけは、


「どんなゆめをみているの?」



Aさんの物語
「洞窟の中で、怖いゆめを見ている。
まわりの花たちが心配して、この子を助けようと近寄ってきた」


Bさんの物語
「ここは高級ホテルのスイートルーム。エステを満喫している夢を見ているの!」


Cさんの物語
「生から死へ向かうトンネルの中
生きていた頃の想い出
摘んだ花の記憶
これから訪れる事の想像
少女がまだ”生きて”いるので花は咲いている」




『朗読会』

『白昼夢にて』展覧会レポート_b0156423_21342841.jpg



この作品の問いかけは、

「なにをよんでいるの?」


Dさんの物語
「本にはこれから起こる未来の事が書かれていて、みんなが聞きに来ている。白紙の絵本で、彼女だけが読める。」


Eさんの物語
「少女は後ろの船が落ちるのを待っている。
彼女はじつはロボットなのだ。手からミサイルが出てうしろの船に・・・」


Fさんの物語
「母親が自分の産まれた時に書き始めた育児日記。」




『シグナル』

『白昼夢にて』展覧会レポート_b0156423_22265222.jpg



この作品の問いかけは、

「なにをまっているの?」


Gさんの物語
「まだこなかなあ?時間はもう、すぎてるよ!(友達へ)」


Hさんの物語
「三日前から帰って来ない飼い犬を待っている。探し疲れ、途方に暮れている。」


Eさんの物語
「ミラーは別世界への入り口。
そちらに行くタイミングをはかっている。たぶん彼女は宇宙人」




『生きる力』


『白昼夢にて』展覧会レポート_b0156423_22243887.jpg



この作品の問いかけは、

「なにをしているの?」

Iさんの物語
「この不思議な湖に入った動物は、人間になる。
女の人はクジャク。人になったのはいいけど、なる前の印象と現実はちがくて、ゆううつ。」


Jさんの物語
「海から生まれた生命。木も鳥も。そして人も。でも彼女はただの人ではない。
天地を創造した女神のような表情がある。今は、世界を憂いているのかな。」


Kさんの物語
「全てを食べる。肉と血も。」




『風景画』

『白昼夢にて』展覧会レポート_b0156423_22285627.jpg


この作品の問いかけは、

「むこうがわに なにがあるの?」


Lさんの物語
「おじいちゃんち。縁側に風鈴の音と蝉の声。じいちゃんが座ってうちわを持ってる。
ばあちゃんがスイカを切ってくれて、”手ぇ洗って来なー”て見つけて声をかけてくれる。
林から帰ってきて、汗だくだったからスイカがちょーおいしい!じいちゃんと種をとばしたよ!」


Mさんの物語
「中国四千年の歴史のような、雄大なもの。仙人がいると思う。
その人をみんな、この景色を見ながら訪れに行く感じ。」


Nさんの物語
「あのおうちには家族が住んでいて、おいしいパンがある!」


ほんの一部ですが、ご紹介させていただきました。
今回の展覧会では、作品に対し”答え”や、制作者の意図の謎解きといったものを用意するのではなく、
作品に対し一人一人が向き合い、感じ考えるというような、創造的なことを行いました。
そのためには、鑑賞してくださる方々にとっかかりやすいような問いかけを投げかけたり、
それぞれにある多様な解釈を認め、受け止めるといったことの必要性がありました。


アートとはなにかと考えた時に、制作者側の一方的な表現活動と考えがちです。
しかし、”物語を創ってもらう”といったアプローチ一つで、制作者側と鑑賞者側が相互に深く作用し合う関係になれることに気づきました。
皆さまの物語を聞いたり読んだりしているうちに、「なるほど!」「確かに!」と思える事が多々ありました。
アートは制作者だけでは成り立ちません。鑑賞者がいてこそ成り立ち、さらに反応(物語)をいただけることで、
自分自身が気がつかなかった事に気づき、新たな見方でまたアートを追求できるのではないかと思います。
また鑑賞者側である皆さまが、物語を創り、自分だけの視点を織り込むことで、作品が自分のものであると言えるようにもなると思います。



ご紹介させていただいた物語も、どれもそれぞれの視点で生き生きと書かれています。
また作品の画面には映っていない出来事まで考え、想像しています。
受動的ではなく、能動的に作品と関わってくださったことを、心より嬉しく感じます。
本当にありがとうございました。



以上、作者の展覧会後の感想



・清水のとった鑑賞者との関わりは、ワークシートを使うという、ごくありふれたものであった。

しかし、絵画に対して作者が用意した質問は、目の前の絵画には「解答」が存在しないものである。

誤解を恐れずに言うのなら、今回の清水のキャプションでの鑑賞者への質問とワークシートという試みは、美術館のキャプションなどに書かれる年代や技法を鑑賞者に情報として与えるのではなく、自分の作品の「外」へ鑑賞者を連れていく試みであったと感じる。

『風景画』の質問は、「ここはどこ?」や「赤い屋根に誰が住んでいる?」といった質問ではなく、絵画の画面には描かれていない事柄を尋ねる「向こう側になにがあるの?」といったものである。

このことからも、作品を通して、作者は自分の絵をただ検証するようにみるのではなく、自分の作品をきっかけにして鑑賞者自身の想像力をみてほしいのだと私は実感した。

描かれているものを通して生まれたイマジネーションこそが、鑑賞者自身の画面であり、能動的な鑑賞行為は制作行為とも言えるだろう。

鑑賞者を、作品制作の地平へ連れて行ってくれる清水の今後の作品に期待したい。




                          KAPL代表:浅見俊哉
by kapl | 2009-06-29 22:46 | 2009.6月の企画

カテゴリ

全体
最新の企画
KAPLとは?
地図・アクセス
2008.7月の企画
2008.8月の企画
2008.9月の企画
2008.10月の企画
2008.11月の企画
2008.12月の企画
2009.2月の企画
2009.1月の企画
2009.3月の企画
2009.4月の企画
2009.5月の企画
2009.6月の企画
2009.7月の企画
2009.8月の企画
2009.9月の企画
2009.10月の企画
2009.11月の企画
2009.12月の企画
2010.1月の企画
2010.2月の企画
2010.3月の企画
2010.4月の企画
2010.5月の企画
2010.6月の企画
2010.7月の企画
2010.8月の企画
2010.9月の企画
2010.10月の企画
2010.11月の企画
2010.12月の企画
2011.1月の企画
2011.2月の企画
2011.3月の企画
2011.4月の企画
2011.5月の企画
2011.6月の企画
2011.7月の企画
2011.8月の企画
2011.10月の企画
2011.11月の企画
2012.1月の企画
2012.2月の企画
2012.3月の企画
2012.4月の企画
2012.5月の企画
2012.6月の企画
2012.8月の企画
2012.9月の企画
2012.10月の企画
2012.11月の企画
2012.12月の企画
2013.1月の企画
2013.2月の企画
2013.3月の企画
2013.4月の企画
2013.6月の企画
2015.5月の企画
2015.7月の企画
2015.10月の企画
2015.11月の企画
2016.2月の企画
2016.5月の企画
2016.8月の企画
2016.9月の企画
2016.11月の企画
2017.1月の企画
2017.2月の企画
2017.4月の企画
2017.7月の企画
2018.5月の企画
2018.12月の企画
2019.6月の企画
2019.7月の企画
2020.9月の企画
2021.7月の企画
2021.8月の企画
2022.9月の企画
2022.10月の企画
MAPまちアートプロジェクト連携
メディア・プレス掲載
活動のプレゼンテーション
SMFとの連携
メンバー募集
利用希望の方へ
維持会員募集
維持会員の皆様
KAPL代表の部屋
KAPLメンバールーム
KAPL協力企画
未分類

フォロー中のブログ

今日マチ子のセンネン画報
美術と自然と教育と
エキサイトブログヘルプ
文教大学教育学部 美術研究室
街を美術館にしよう! ま...
corsage
A
Photo Expres...

ブログパーツ

最新のトラックバック

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧