チャイムが鳴った!「5750分」展終了!

・8月8日~11日、KAPL(コシガヤアートポイント・ラボ)にて行われた「5750分展―生き残れ美術教育!」展が無事終了しました。

また、会期終了二日後の13日には、埼玉県立近代美術館にて、今回の取り組みの報告をさせていただきました。

この一連の「時間」を通して、感じたことや考えたことをレポートします。





1:はじめに


今回の企画は、美術教師としてではなく、「美術」に携わる人間一個人として「美術教育とは何か?」を問う具体的な行動である。

またその問いは「美術とは何か?」を問うことでもあった。


平成24年度より全面実施される新学習指導要領で選択科目から美術科が消え、中学校三年間で生徒に与えられる美術の時間は「5750分」(115時数×50分)のみとなった。

美術教育の中で騒がれている危機感…授業時数の問題やそれに伴う美術教師の数の問題(各校に美術教師は一人いるかいないか)…が声高に訴えられる中で、本当に美術教育の危機、問題はそこにあるのだろうかと疑問を感じていた。

以前、中学校三学年の生徒にアンケートをとったことがある。

Q1:図画工作・美術は好きか?

Q2:図画工作・美術をどうして学ぶのか?

Q3:図画工作・美術を通して自分についたと思う力は何か?


Q1では、約6:4=好き:嫌いの割合だった。

Q2:では、「想像力をつけるため?」、「漫画家になる人のため?」、「生活を楽しくするため」、「作品をつくることで考えを深めるため」などが挙げられた。

Q3では、ほとんどの生徒が「わからない」と回答した。

このアンケートで、私は、どうして「美術を学ぶのか?」を生徒の実感を持って伝えていく必要があると感じた。
授業を一生懸命に行っている生徒でも、美術科を通して自分についた力を実感できていない現状に大きな問題があるのではないかと考えるようになった。


「美術教育とは何か?」という問いに対し、私たちは「十分な伝達を実感を持って生徒に、社会にしてこれただろうか?」

「目の前の生徒に与える題材一つ考えても、本当に自分自身がリアルな実感を持っているか?」

解決できない大きな問題だからと、誰かが解決してくれるのではないかと、自ら具体的なアクションを怠ってはいないだろうかと私は常に反省する。

今回、「美術」に携わる者一個人として、この問題に対し具体的なアクションを試みたいと考え、同じ問題を抱えている4人と「5750分」展を企画した。



2:自分が変化できる「場」


今回の「5750分」展の大きな成果があるとすれば、それは、参加した自分自身が変容した点にあるだろう。

以下は、展覧会を終えた時の感想を紹介する。


・大学を卒業して、教育の現場に入り、自身が「つくること」と「教えること」のギャップを強く感じた。
その「つくること」と「教えること」の間にある溝はまだ深い。

現場に入ってすぐの頃は、その溝の原因が何なのか分からなかった。
分からないまま時が過ぎ、いつの間にか「つくること」の本当の楽しさや苦しさの実感が自分自身に無くなっていき、その「つくること」の本当の楽しさや苦しさはただ「教えるもの」だけになっていた。その時、両者の間にある溝はさらに深くなっていく感じがした。その問題に目を背けるたびに、溝は深くなった。

しかし、ある時、自分から具体的なアクションを起こしていくことで少しずつだけれどその二つは寄り合うことに気づいた。その時、常に自分から行動しようと思った。今回の「5750分」展もその一つ。

つくることは、自分でも何だかわからないものに挑んでいく戦い。その姿を目の前の生徒にみせていくこと、ものをつくることの楽しさや苦しさを共有出来たらと思う。先生も悩んでいる、戦っている。美術の他教科にはない魅力はこの点にあるのではないか?時に同じ地平で物事を考えることが出来る。それが一番の言葉ではないか?

自分が今持っている問題についてリアルな実感を得たいと持った時、やはり自分で「場」をつくり発信していかなくてはならない。なぜなら、誰かが用意してくれた「場」で誰かの責任で何か体得できたものは自身にはリアルな実感を伴って残りにくい、全責任を自分で負うという覚悟が一つの言葉でありたいと考えるし、それがつくるということだと信じたい。

ひとつのアクションが終わると次のアクションが具体的になる。次のアクションに向けて動き出したい。


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「5750分展」の2日目~3日目の夜に制作した、19:03~5:14の約10時間の「15秒人」を1分の映像にし、シャッターに投影して道行く人にも公開した。撮影枚数は467枚。

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作品のギャラリートークの様子

 浅見俊哉


・迷ったり、悩む時間の楽しさを再確認した。教える側だけになったら生徒のこの時間をなかなか抽出するのは難しい。自分が作品制作をしているときに現れる悩みの楽しさを生徒にも伝えたいと思った時、やはり自分の作品をつくっていたい。




 柴直子


・4日間はあっという間だった。現場に入って3年目になって形が出来てきて、「美術とは何か?」や「美術教育とは何か?」と、考えることをどこかでやめてしまっていた自分に気がついた。自分でつくった形に甘えてた部分があった。常に自分が考えていなければいけないし、発信しなくてはいけない。これからも、いろいろ考えてやっていかなくてはならない。



 廿楽紘子 


・大学を卒業して現場に放り込まれて何だかよくわからないもやもやしたものが自分の中にあったが、自分でチャレンジすることでそのもやもやが少し消えた。自分でできることを整理出来た。今回の行動が、私の二学期からの力になった。



 島田温子


何か分からないものを分かろうとする行動が出来る場は、どれだけあるだろう?

全てが目的化され、成果を求められる中で、分からないからやるという言葉が認められる場はどれだけあるだろう?

目的や成果から手順を考えるのではなく、結果からその問題を考えるのではなく、分からないからやる、検証できる「場」を今回つくりたいと思った。


(制作した作品の前で集合写真)


3:「次へ」のエネルギーの創造

私の尊敬する人が「いい作家は、人を作家にする」と言っていた。

いい作家はいい作品をつくるのではなく、人を作家にするのだという。

次にその人がアクションを起こしてしまう、そんな行動が今、社会は求めているのだと思う。

自分で自分の問題に立ち向かうエネルギーを湧きあがらせる行動をこれからもしていきたいと強く感じた。

(1~3:5750分展覧会ノートより一部抜粋:記録者・浅見俊哉)


4:あれから2日後…埼玉県立近代美術館での発表

展覧会終了2日後の13日、14:00~16:00、埼玉県立近代美術館2階講堂で「5750」分展の活動報告をさせていただきました。「彩ネット」という埼玉の教員が中心となって美術教育を考える場の夏の会の中での発表でした。

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(「5750分」展、埼玉県立近代美術館での活動発表の様子)
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(セッション「美術教師新人(浅見俊哉)VSベテラン(鈴木斉)」での協議の様子)
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(島田温子の作品が、鈴木斉先生の持ってきたお土産とコラボした)
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(会場の先生方の持ってきた資料などを見せ合い、グループで話し合った)

その後の、グループでの話し合い、打ち上げの納会の中で、美術教育そのものを考えたり、自分の制作してきたこと、そしてその制作が今につながっているというような、美術教師としての意見といううよりも、1制作者としての視点から美術教育を考えている人が多かったと意見を頂くことが出来ました。私自身も、どんな視点で制作の世界に入り、今があるのかというお話が出来たことがとてもうれしく、今を考える実感に繋がりました。



最後になりましたが、今回の展覧会を開催・運営するにあたり、たくさんの方々のご助力がありました。

この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。



            KAPL代表:浅見俊哉


加筆:2009・8・19
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by kapl | 2009-08-15 15:38 | 2009.8月の企画

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