「5750分展 オープンミーティング2012」
去る、8月5日(日)。
美術教育について考える「5750分展オープンミーティング2012」がKAPL(コシガヤアートポイント・ラボ)で開催された。
この企画は、2009年から毎年一回開催され、「現役の美術教員が日々行っている教育活動を美術教育に携わらない人にも見てもらい、美術教育について一緒に考えてみよう!」という企画である。
今回は、実際に授業で生徒が制作した作品を鑑賞し、その授業のねらいや授業でどのようなことが起きたかを発表し、会場の人と一緒に考える時間になった。
生徒の作品を見て、こんな細かい所までつくり込んでいる!と驚く来場者
授業のプレゼンテーションの様子『未来のカメラをデザインしよう!』
制作の前にアイデアを練り、広告をつくり、その広告をもとに立体化する。
またその作品を通して、自分の作品を説明するプレゼンテーションの場を設定した。
来場者からは、
「自分のオリジナリティを追求し、制作し、それを人に伝えるところまでを授業として設定されていて、生徒が授業を通して社会に出たときに必要となる力をつけていたように感じた。」
「自分は電化製品の販売をしているが、販売の人はこういう製品がほしい!などのアイデアを考える機会が少ない。中学校の授業で製品が出来、それを人に伝えるという全体の流れを擬似的ではあるが経験することによって、様々な職種についたときもアイデアが出せる人になると思う。」
「普段は電化製品はあるのが当たり前だったが、それをつくるにはデザインを考える人がいることを想像できるようになると感じた。」
新聞紙で落ち葉を制作する「スーパーリアルアート」の実践発表では、
秋に一枚自分のお気に入りの落ち葉を探すところから制作がはじまり、その落ち葉をスケッチし、新聞紙を使い立体化する。
この授業を通して考えてもらいたいテーマは「リアルとは何か?」
リアルに制作するというアプローチは、色や形にリアリティを求める生徒が多い中、ある生徒が落ち葉のリアルは、「落葉すること」だという視点から、落ち葉の落ち方にこだわった制作を行った。
新聞紙を多く使いすぎると落ち方が直線的になるので、軽いティッシュペーパーを主な素材に選び制作。
「リアルとは何か?」というテーマに肉薄する授業に参加者は美術教育に関心を持たれたようだった。
今年で4年目となる本企画では、美術教師どうしのネットワークも形成されている。
会期中20名の来場者があったが、美術教育に直接携わらない来場者は10名であった。
美術教育を様々な立場の方と考えて行くことで、現場に生かせるアイデアが生まれる。
現在、多くの学校では美術の時間数の関係で1校に1人の美術教師であるという状況がある。そうした中で、自分たちの実践を高め、磨くには多くの人に自分の実践を見てもらい意見をもらい向上していくしかない。
今後も美術教育を多くの人と考えていけるよう努力を続けたい。
●5750分展オープンミーティング2012
●企画概要
「5750分」これは何の数字でしょうか?実は現在の中学校3年間で学ぶ「美術の時間」です。「美術教育についてみんなで考える場がほしい!」「美術教育の今を発信する場をつくりたい!」と2009年、現役の美術教師が中心となり、「5750分展」が生まれました。
文部科学省が告示する平成24年度から行われている「新学習指導要領」(学校現場で行われる教育課程の基準)では、中学校3年間で行われる「美術の時間」は週に1時限(1年生は1.3時限)に定められています。1時限は50分、3年間で115時数ですから合計すると「5750分」が、「美術の時間」というわけです(参考までに英語は21000分です)。「5750分」、日数になおすと約4日間のこの時間を多いと感じるでしょうか、少ないと感じるでしょうか。
私達は今回、2009年から2011年まで行った「5750分展」を振り返り、新学習指導要領の下、行われている『美術教育の「現場」を共有する』をテーマに、美術教育に携わる人はもちろん、だれでも参加可能なオープンミーティングを行います。
●日時
2012年8月5日(日)
13:00-19:00
●タイムスケジュール
13:30~14:00 自己紹介・顔合わせ
14:00~14:20 5750分展3年間を振り返って(プレゼンテーション)
14:30~16:00 実際に行っている美術授業の題材紹介(現役美術教員)
16:00~16:10 ブレイクタイム
16:10~17:10 題材紹介を受けて意見交換会
17:10~18:00 懇親会
中学校教員、高校教員による、美術の授業紹介。
その授業紹介を見て意見交換。
●会場
KAPL(コシガヤアートポイント・ラボ)
埼玉県越谷市北越谷5-9-27
●その他
参加無料・出入り自由
●関連リンク
・『5750分展Ⅰ―生き残れ美術教育―』2009年8月企画
・『5750分展Ⅱ―美術教育は生きているか―』2010年8月企画
・『5750分展Ⅲ―ようこそ美術室―』2011年8月企画
・『5750分展』メディア掲載関連
・『5750分展』関連記事リンク集