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『春だから写真展』報告

初夏の光が降り注ぐ中、2018年5月19日~20日にKAPLの5月企画展が行われました。
お忙しい中ご来場下さった皆様、本当にありがとうございました。
ここでは、展覧会とレセプションの様子をご報告いたします。
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本展覧会では、「作品のタイトルを考えよう!」という活動を通して作品を深く味わっていただく企画を実施しました。
作品についているキャプションには作者名のみ。
カウンターの上には、①本当の作品タイトルと、②作者考えたダミータイトル、全部合わせて16パターンが並んでいました。

○タイトルの選択肢
・溢ーあふれる水滴ー ・溢ーこぼれる水滴ー ・重ねる ・春 ・呼吸する影ー桜葉図ー ・呼吸する影ー
・日記 ・朝露 ・一瞬の間 ・City Communication ・ひだまり ・春天过了 ・春天来了 ・トレース ・煩悩108 

19日の17:00から開催したレセプションでは、参加者全員が1つずつの作品に対してディスカッションを行い、話し合いの中から一つの予想タイトルを導きだしました。
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以下は作品の紹介と、その話し合いの記録です。
(入口からの作品配置順に紹介いたします)

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作者:すずきまりこ

「日記だと子どもの記録だけでいいけど、命の芽吹きも考えると紡ぐかな」
「紡ぐ、かな、命を紡いでいく感じが・・・」
「日記じゃ狭い、紡いでるかんじがある」
「重ねる、もありそう。右下の写真は空が抜けていくかんじが気持ちいい。
命と自然を重ね合わせてるのか…」
「時間軸が異なる写真があるから…春以外もあるから、毎日を重ねていっての今…?」
「でも、配列見ると重ねる、というのがはっきりしてない感じはある…」
「では、”紡ぐ”、で!」

話し合いの結論⇒「紡ぐ」
作者がつけたタイトル⇒「紡ぐ」
<作者の解説>
作品を出展するにあたって、今年1年間のフォルダを見返した時に、昨年生まれた息子と、息子と一緒に見た景色ばかりでした。写真を撮る時も抱っこやベビーカーに乗る息子越しでした。一心同体の感覚から、どんどんと1人の人間になっていく息子との不思議な貴重な1年でした。一つ一つの出来事がつながり、日々を作っていく。そのようなテーマで作品を制作しました。

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作者:浅見俊哉

「朝露っぽい」
「(作者に撮影の話を聞いた時)この日雨は降ってなかったみたいだけど」
「魚みたいな形もある、魚がいっぱいいるね」
「水滴かも…」
「朝感はない、白が強いから光も強い感じだから朝っぽくない」
「全体の印影がはっきりしてるから水っぽくないかも。ほこりとか、草木の種とか花粉かも」
「北越谷で見た花吹雪みたい」
「一瞬一瞬を記録し続ける作品かもしれない」

「では、”一瞬の間”で!」

「”呼吸する風”のどちらか、なら…」
「葉っぱだと思いました。白の方に目がいったので」
「桜風かな、風が強かった情景が思い浮かぶ。見えない風が持ってきた子達を残したかったのが大きなテーマかな」
「ざらっとした感じが砂嵐かなって」
「花吹雪感があって、風、白いのも雪っぽい感じも。葉の細かいところも写し取れているけど」
「では、”呼吸する風ー桜風図ー”で!」

話し合いの結論⇒「一瞬の間」「呼吸する風ー桜風図ー」
作者がつけたタイトル⇒「呼吸する風ー桜風図ー」
<作者の解説>
形ないものをどうやって捕まえるのかが制作のテーマです。
点々が風を表しています。(一度作ってあまり風を感じられず)もうちょっと流れる感じを作り直したのがこの作品です。小さい点々は周りにある砂埃を乗せて撮っています。砂を撒くと砂っぽくなるので流れが出るからそれを考えて演出をしました。
これは後で、真ん中で切ってのれんになる予定です。
展示の仕方も風を意識して揺れるようにしてる、動画っぽい感じに見えればいいなと考えました。
光と仲良しになるのは大変です。

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 作者:渡辺範久

「ここに行きたいなって思います」
「街の憩いの場的な感じ」
「かわいいな」「色味があったかい」
「カフェ巡りが趣味だから日記、とかかも。でもカフェに行きすぎてて煩悩が現れてるかも…
写真の中にその場所の地図みたいなのが入ってる。写真とか次の場面を繋いでるから、紡ぐとか重ねるがあるかも。あとお花のお土産みたいなのがあるから朝露とか春があるかも。」
「感じといい枠といい、インスタ日記感が…几帳面に記録を残してる」
「たしかに。ハンモック…ひだまりかも」「サンルームもひだまり感」
「ひだまりはカフェを暗喩してるのかな」
「人の集まる場所を指してひだまりを作ったよ、って…」「コミュニケーションかな」
「克明に残すという意味ではトレース。
コミュニケーションというには人が話してるのが少ない。それよりは状況とか建物の匂いが強い。コミュニケーションの場なんだろうけど、まずは場のことを言ってるのかも。」
「あったかい感じと憩いの場、っていう話を聞いてたらひだまりかも…」

話し合いの結論⇒「ひだまり」
作者がつけたタイトル⇒「City communication」
<作者の解説>
最近まちづくりをやってて面白い場所を紹介したい、建物と敷地の展開図を写真で表現しています。
オーナーみんなが店を行き来していて、客でありオーナーである距離感が面白い場所です。
いろんな人が好きなタイミングで好きなことをやってる・・・。
この作品は場のトレースから始まってて、2007年に街の風景を卓上カレンダーみたいにして作った作品があるのですが、それを11年ぶりに同じテーマでやってみようと始めました。人が能動的に楽しんでる姿を形にしました。

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作者:柳原敬

「どこ行ったんだろうね」
「ゴルフ場?」「北越谷?」
「芝枯れちゃってる…春すぎたら夏だしなぁ」
「もうちょい時間的なものを感じなくもない」
「ゴルフ場での大人のコミュニケーションかも・・・」
「駆け抜けた日々を…あまり規則性がないから日記」
「フィルムみたいになってる…」
「なんでゴルフなんだろ、(一枚だけ)フィルムみたいになってない」
「やっと(ゴルフに)来れたんだよ」
「いいスコアが出たんじゃない?」
「やっとゴルフに来れた…?もう冬だけど…」
「上の写真の中で時間が止まって、春が過ぎてようやく来れたゴルフ場?」

話し合いの結論⇒「春天过(←去、という意味)了」
作者がつけたタイトル⇒「春天过了」
<作者の解説>
当初は「春天来了」でタイトルをつけようかと思っていました。
ところが今年は春の桜を楽しむ間もなく初夏に突入してしまい、気がつけば春が終わってしまった・・・。
であれば・・・いっそ、その気持ちをタイトルにしようということで「春天过了(過ぎ去りし春)」となりました。
作品は2012年から同じ曜日に撮った思い出の作品群が1枚、そして今年撮った春の写真が1枚です。
同じ週に桜が咲いていたのが(もしくは被写体にしていたのが)わずか2枚。その年々で再開・別れ・チャレンジetc.の色々な気持ちで時間を切り取っていたことで、過去から元気をもらいました。写真の良さに改めて気付けたのは、展覧会のおかげです。

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作者:小宮貴史

「これこそあふれるじゃないですか。トレース…あれ(水の写真)に近づけようとか、追従させようとか」
「同じ形なんてできないじゃん。でもそれを追求させようとした…煩悩…」
「なぞる、やってることはトレース」
「写真だけなら一瞬でもいいけど…ここの写真で出てる水の形とこの(水の跡を残す)動作は違うからトレースじゃない」
「本当は口に含んで吹くのかも!?」
「(水が蛇口から)下にこぼれたのを作ったような気にはなった…溢れて下にきた…」
「水滴感はあるから…あふれるっぽい気もするけど…感覚的にはこぼれるほうかな。
あふれるは、たまった水がこぼれる感じだけど、いっぱいになる前に落ちてる感じがあるからこぼれる、のほうがしっくりくるな。」

話し合いの結論⇒「溢-こぼれる水滴」
作者がつけたタイトル⇒「溢-こぼれる水滴」
<作品解説>
この作品は、春とは思えぬほど強い日差しの日に撮影しました。何か考え事をしながらふと目に付いた水飲み場で撮影したと記憶しています。キラキラした水玉がふよふよとしている様子を撮影してみようと思いシャッターを切りました。何枚か撮影していると、流れる水の勢いやシャッターを切るタイミングによって、一度として同じ形の水玉は撮影できないということに気付きます。当然といえば当然ですが、改めて考えてみると、とても大切なことのように感じました。
あれやこれやと考えて「万物は流転する」などと哲学っぽいことを考えたりもしましたが、なぜかその時、私は少し不安な気持ちになりました。
おそらく、「今」を取りこぼしているかもしれないことが怖かったのかもしれません。
故にタイトルは「溢れる(こぼれる)水滴」にしようとしたのですが、今回の趣旨を鑑み、ダミータイトルとして「溢れる(あふれる)水滴」を考えてみてハッとしました。漢字が同じだということにその時気付いたのです。
「こぼれる」と「あふれる」同じ漢字ですが、音にした時のイメージは少し違うような気がします。
この作品を撮影した時の私はぼんやりとした不安から「こぼれる」イメージを受け取りました。そしてタイトルをつける時に漢字について知り、驚くと同時にポジティブな気持ちになりました。
改めて振り返ると今回の展示の趣旨により、いつも以上に気付くことになりました。
写真を撮影して作品として展示すること、その行程について考えさせられました。

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作者:服部真理子

○右の作品について
「雫がすごくついててきれい」
「なずなは春だから春かもしれない、水滴あふれるかも。」
「草木が重なってる感じがあるから重ねる、も…」
「春は過ぎてない・・・?春そのものが来てる」
「光が水色になってる」
「春真っ盛りな感じだから春が来た後って感じかも…重ねる、一つのものじゃなくて景色が重なってるから…
あふれる、のほうがいいな。自然で広い感じ」
「作者が…水っぽいことに着目してるきがする」「雫にピントを合わせてる」
「鬼からお姫様を連れ去っていくときに蜘蛛の巣が光った昔話を思い出した。
こぼれる、は、次のシーンを考える。写真にはない、先のことを言ってるのでこぼれる水滴」
「”朝露”はそのままの姿だけど、その先を読むっていうのが面白い」

話し合いの結論⇒「溢-こぼれる水滴-」
作者がつけたタイトル⇒「春」
<作品解説>
春に華やかさだけじゃなく、緑色に春を感じるようになりました。
春には、さみしさも少し感じます。
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○左の作品について

「その日を切り取って大切にしてるかんじ」
「春が来た、ってかんじ。日本酒の瓶が気になるからこぼれる…かも」
「酒、食いもん、女が入ってるから煩悩かな」
「やさしく、ひだまりかな。絵的にはみんなが飲んだり食ったりするひだまりだよ」
「楽しい感じ。酒を重ねるもある。醜態を重ねて煩悩…」
「先を読んだ間があるから…」
「朝露がこぼれるのも酒がこぼれるのも同じかも。左の三枚なら花だけど右下に日本一の焼き鳥が…
結構深いテーマがあるかもね。」
「飲んじゃって終わっちゃったさみしさ。祭りの後的な。浮かれて楽しいな、が終わった」
「春が過ぎて終わった、だから春天过了」
「大切な一日を切り取ったという意味では日記」
「楽しい時間が過ぎてしまう、という意味では春天过了かな」

話し合いの結論⇒「春天过了」
作者がつけたタイトル⇒「一瞬の間」
”春は一瞬”(という感覚があります)。
使い捨てカメラで撮った気に入った写真を出しました。
終わったあとのさみしさを表しました。

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作品について語り合うことで、いろんな視点を持って深く楽しい鑑賞をする時間となりました。
また、作者自身も、作品について新たな発見を得ていたようでした。

KAPL2018年5月の報告は以上です。
これからもわくわくを共有できる場所をつくっていければと思います。
ありがとうございました。





by kapl | 2018-05-29 20:32 | 2018.5月の企画

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