KAPL12月の展覧会
二人展『オレンジ―夕方にさわること―』
全3日間の会期のうち、2日が無事終了しました。残り12月26日(土)を残すのみです。

夕方の陽差がオレンジ色になる15時オープン。
展覧会開催2日目のギャラリートークの様子
●ギャラリートークでお話させていただいたことと、いまタイピングをして感じていることを少し…
今年の6月頃、高橋さんの脚本をいくつか読ませていただいて、漠然と展覧会にしてみたいなぁと思ってこの展覧会の制作が始まりました。脚本は「映像の設計図」であって、人の手に渡り読まれるわけではないということを私はこの展覧会をつくっていく中ではじめて知りました。今回、高橋さんと共に展覧会を考えるに当たりこのことはとても大きなキーワードで、心に引っ掛かっていました。脚本は記号の様でとても渇いているものだと思います。その中で、読んだ人が自由にイメージを膨らませ行ったり来たりできる。それは、私が表現した写真を用いた作品ととても近いものです。文章と写真からイメージが膨らむ空間をつくり、その中で作品を見た人とイメージの交換をしたいという気持ちが展覧会を具体的なものとしていきました。
文章と写真の相互の関係には細心の注意をはらいました。脚本だけで独立して映像のイメージが産み出せるものに、写真という映像を見せる必要があるのか。あるとすればそれはどのようなものなのか。展覧会の構成は、脚本にある文章が抜け落ち、写真が挿入される形、または写真からいくつかの文章が生まれる形でつくられています。お互いに「分かりやすいもの」にならないよう、迎合しないよう、制作を進めました。
私が今回の展覧会にあたり撮り下ろした作品はほんの一部で、10組の写真の中のほとんどのものは、4、5年前に撮ったものです。過去に行き、かつて撮影したものを抽出する作業が作品制作の作業のほとんどを占めました。その頃は一日に200~300枚程の写真を撮影していたので全ての写真を見るだけでものすごい時間がかかりました。ひとつの展覧会のテーマに合わせて見返してみると、引っ掛かる写真とそうではない写真があり、引っ掛かった写真には共通点がありました。それは「過去が濃厚」であるということ。視覚だけではなく、その時の気温や湿度、季節、喜びや不安である気持ちなど、視覚だけで撮影したものではないものであって、しかもその時の記憶が五感に濃厚であるものたちでした。今現在シャッターを押すことで写真を撮ることが出来ますが、過去に泳いで抽出することでもう一度シャッターを切って写真を撮った感覚になったことがとても新鮮でした。今が沢山過去になっていくことで熟成される濃厚な過去が今回の展覧会をつくるにあたって見つけることが出来たことはとてもうれしいです。
展覧会のサブタイトルである「夕方にさわること」は誰もが持っている夕方の記憶にさわることではないのかなと展覧会を何周もする中で感じています。皆さんはどうでしょうか?だからこそ、私や高橋さんは私達の夕方を決定づける「分かりやすいもの」を避けたのではないかと、今思います。来場くださった皆さんのご意見をお聞きしたいです。
●レセプション&ギャラリートークの中でゲストから出た意見を紹介します。
・文章と写真どちらが先に生まれたのか。
・展示の構成が三段になっているがその意図は?
・ふたつの表現がミックスしているのではなく緊張感を持って存在している、けれど決してバラバラに独立しているわけではない。
・言葉が静かで、写真に音がある。
・双方があることでイメージが膨らんだ。
・一回観終わった後にもう一回みたくなった。ループするのが面白い。
・脚本は普段は人前で読まれないもの、こうした展覧会は一つの表現の形としていいと思う。
・会場が新しい作品のようだった。
・個性がぶつかり合ってる。
・一体化しているというよりは、イメージを共有しているという感覚。不思議な感覚。
・完全にマッチしているわけではない。
・脚本が作品になっていた。
・写真が全て風景的なもの、人物がいたらどうなったのか。
・写真は文章を見て新たにとったものなのか。
とても闊達な意見が出されました。
おまけ

展示の様子、詳細なプランニングを考えていても実際の作業ではうまくいかないところや逆に展示作業で生まれるアイデアもある。今回は脚本(文章)と写真(ビジュアルイメージ)をどう展示するかに意識をむけました。
展覧会最終日は12月26日(土)15:00~19:00です。
19:00からは簡単な懇親会も予定しております。是非皆さまご来場くださいませ。
記事:浅見俊哉(2009.12.23)
------以下展覧会詳細----------
KAPL12月の企画展は、脚本と写真による空間を使った「体感する物語」の展示風景です。
以下展覧会詳細
二人展『オレンジ―夕方にさわること―』
会期:
2009.12/19(土)・12/20(日)・12/26(土) 全3日間開催 15:00-19:00
会場:
KAPL(コシガヤアートポイントラボ) 入場無料
作品出品者:
・高橋有里(Takahashi-Yuri)‐作家
大学在学時よりシナリオ・センターで脚本を学び、2008年に本科を卒業。小説執筆を中心に、自主映画の制作や脚本にも携わり、 幅広い活動を展開している。
・浅見俊哉(Asami-Shunya)‐美術家
作品制作、ワークショップ、美術教育、アートプロジェクトなどを通して、美術でできること」を日々のフィールドワークから模索。web:
http://asaworks.exblog.jp/
展覧会趣旨:
本展示は、高橋の脚本と浅見の写真作品から構成される「体感する物語」の展覧会です。展覧会の中で貴方は文章を読み、写真を見て、イメージを生みだしていきます。小説を読む様に、また写真集の頁をめくる様に…。その二つのイメージが織り成す空間に、鑑賞者のイメージが重ねられることで生まれる「物語」は貴方にどんな体験をもたらすでしょうか。ご来場お待ちしております。
展覧会関連イベント:
参加無料:どなたでも参加できます。
○作品出品者によるギャラリートーク
‐「物語」の生まれるまで‐ 12/20(日)16:00~17:00
ご来場をお待ちしております。